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a活動報告新着情報・FAQ

 認知症研修会  2010年10月2日(日)                       ポスター
「明日からできる認知症の生活スキル 行動リハビリテーションを活用する」

 夏の暑さも少し落ち着き,本研修会のポスターのような秋の訪れを感じる中,東陽町の臨床福祉専門学校にて認知症研修会が開催されました.作業療法士,理学療法士,言語聴覚士,視能訓練士,看護師,大学教員,障害者職業カウンセラー,支援員など,リハビリテーションや教育に携わる様々な職種の方が93名ご参加くださいました.さらに,今後に向けたトライアルとして北海道の会場へもインターネットを経由して接続し,講演の生中継をご覧頂きながら,質疑応答へもご参加いただきました.北海道会場では10名の先生方が視聴されました.臨床にお忙しく,また地方の先生方に,行動分析学の活用を促す試みとして,インターネットを使った配信を今後も続けていくとのことです

今回の研修会は,当研究会副会長の大森圭貢先生(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院)の司会の下,認知症の方の行動に対する,応用行動分析学の視点に基づいた様々な考え方について,3名の先生方に分かりやすくご講演頂きました.さらに特別講演として,当研究会顧問の山本淳一先生(慶應義塾大学文学部教授)から「『できる』を増やす行動支援:明日から活用する応用行動分析学(ABA)入門」と題してご講演頂きました.

簡単ではありますが,当日の講演内容を以下にご紹介します.
 「応用行動分析学の基礎」
 鈴木誠先生 (新潟医療福祉大学医療技術学部)
対象者の不適切な行動について「やる気がない」などのレッテルを貼るのではなく,その行動と環境との相互作用に着目して分析するという応用行動分析学の考え方について分かりやすくご講演頂きました.行動に先行する刺激,および行動に後続する刺激を介入者が適切に設定することで,対象者の行動が変容するという事実について,オペラント行動やレスポンデント行動という心理学的な視点からだけでなく,従来の動作練習の問題点やその改善策という臨床的な視点からも解説され,とても興味深い内容のご講演でした.
 「認知症患者に対する行動分析学的介入」
 山崎裕司先生(高知リハビリテーション学院理学療法学科)
認知症を有していても行動分析学的介入は有効であることを,根拠となる過去の研究結果をご紹介いただきながら分かりやすくご講演頂きました.その中でも,@認知症を持つ対象者だからこそ,特に無誤学習が重要であるということ,A認知機能の改善を図るのでなく,その方の行動を変容するという視点をもつことの重要性,Bプロンプト・フェイディングの種類とその方法,Cフィードバックの重要性について分かりやすく解説頂きました.特にプロフェッショナルの褒め方としては,「具体的に褒める」「即時的に褒める」「関連づけて褒める」という褒め方3原則を解説頂きました.また,問題行動に対する介入法としては,問題行動自体を注意するのではなく,増やしたい行動(よい行動)を強化して定着させることで,問題行動の頻度を減らすようにしていくことが重要であると強調されていました.
 「介入事例紹介」
 加藤宗規先生(了徳寺大学健康科学部理学療法学科)
 認知症を有した対象者に関する実際の事例を紹介していただき,応用行動分析学的視点に基づく介入方法,およびその結果と考察について分かりやすくご講演頂きました.認知症を有する5症例が紹介され,「杖歩行の手順が覚えられない症例」,「移乗動作手順が覚えられない症例」,「トイレで頻回に転倒してしまう症例」,「ナースコールが押せずに失禁してしまう症例」,「立ち上がり動作練習の導入が困難な症例」への介入方法を解説頂きました.全症例に共通するポイントとして,認知症だからと諦めず,失敗しない(成功しやすい)課題を設定して繰り返し練習すること,また適切な後続刺激の設定により楽しく練習を実施することが重要であると強調されていました.
 特別講演「『できる』を増やす行動支援:明日から活用する応用行動分析学入門介入事例紹介」
 山本淳一先生(慶応義塾大学文学部心理学専攻)
山本先生のご専門である小児分野から,多くの治療場面の動画を用いてご講演頂きました.臨床で行動を制御するプロフェッショナルの考え方を,動画と同時進行でとても理解しやすくご解説頂き,聴衆にとっては,まさに明日から応用行動分析学を活用するための先行刺激となったことでしょう.ある事例では子供が宿題のノートを放り投げてしまう理由を分析する所から始まり,強く怒っても変化しない行動をどうするかという内容で講演が進みました.怒っても行動が変化しないと,介入者も苛立ちを感じてしまいますが,冷静かつ適切にその行動を分析して介入し,結果を出すことで介入者自身も苛立つことなく達成感を感じられるようになるところが,応用行動分析学を活かした介入法の優れている部分の一つであるとも強調されていました.
臨床では,認知症があり治療者の顔を見ただけで拒否的・暴力的な反応を示す,食堂にさえ出てきてくれないなど,その方の行動への対応に苦慮することが多々あります.4名の先生方のご講演を通し,認知症を有した方の行動の分析方法,および介入方法の基礎を学ぶことができました.認知症が原因で生じている問題へ介入する際に,とても役に立つ考え方を習得することができました.